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課題解決型の福利厚生・人事制度として注目されるGLTDとは?

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

記事の監修者
柿沼 篤史社会保険労務士 (登録番号)第13230488号
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント マーケティング部
当社のマーケティング活動におけるデータ整備や分析業務に従事。社労士の資格を有しており、健康経営をはじめ当社の事業領域に関する知見をもとにアドバンテッジJOURNALの記事も監修している。

はじめに

労働人口の減少が進行するなか、人材確保と活躍推進はますます重要な課題となっています。企業では働き方改革として、これまでの働き方を改善し働きやすい環境を整えることで、生産性向上や、優秀な人材の確保、離職防止に繋げる動きが活発になっています。

今回は、福利厚生制度を活用し、これら人材に関する諸課題に対応している事例をご紹介します。福利厚生制度のトレンドとして、従業員が抱える課題や不安を解決する仕組みを制度化し、多様なライフスタイルのニーズに対応する「課題解決型の福利厚生制度」が注目されています。

その中でも、「育児や介護、病気の治療などと仕事の両立」という、もしもの事態への不安に対応する制度として休暇制度の充実が推進されていますが、ケガや病気などによりこれまでと同じ働き方を継続できなくなった際の生活を支援する制度として「GLTD(団体長期障害所得補償保険)」の存在があります。

GLTDを活用することで、安心して治療を継続でき、治療と仕事の両立支援の土台にもなることから、福利厚生制度として導入が進んでおり、現在では従業員1,000名以上の企業の18%で導入されています(労務行政刊『労政時報』第3957号-18.9.14)。

GLTDは福利厚生という意味合いだけでなく、昨今の健康経営の施策の一手としても注目され、活用されています。

GLTDとは?

企業の従業員が病気やケガなどで長期的に働けなくなったときの収入減をサポートする損害保険を活用した福利厚生制度です。

従業員が病気やケガなどにより、長い期間働けなくなった場合に、最長で定年まで月々の給与の一部が補償されます。長期就業不能になった時の暮らしは、経済的リスクを負います。

日本の社会保障では、長期の休業時は健康保険からの傷病手当金が支給されますが、支給期間は最長で1年半です。その後も働けない状態が継続する場合、障害年金を受け取ることができるケースもあるものの、それだけで生活には足りない場合も多いことが想定されます(障害厚生年金3級の最低支給額は年間58万円程度)。

GLTDは社会保障で不足している部分を補完する保険で、就労できない期間が長期にわたった場合、月々の収入の一部を補償します。また、一部復職したが収入が就業障害発生前の収入に満たない場合にも、減少した収入を補償する特徴を持っています。

メリット

①離職防止と採用力強化として

病気やケガの治療と仕事の両立支援の取り組みとしてGLTDを活用することで、会社が従業員を大切にしているというメッセージを具体的な制度として明示し、従業員に安心感を与え、会社に対する満足度の向上に繋げることができます。また、人材採用においても、安心して働ける企業であることをより効果的に伝えられ、人材定着や活性化に積極的に取り組んでいる企業としてのPRの一手となります。

②がんの治療と仕事の両立を支える施策として

近年、医療の進歩により、がんの治療は従来の入院を中心としたものから、外来通院を中心としたものに変化をしてきました。このため、企業には「がんの治療と仕事を両立」するための体制づくりが求められています。きめ細やかなニーズに対応する時短勤務制度や休職制度を整えることで、治療と仕事を両立できる環境は整備されつつあるものの、以前の所得を下回るケースも発生しており、そのような際の経済的不安を解消する施策として役立ちます。

③従業員のメンタル不調対策・再発回避として

メンタル不調による休職者にとって治療費の支出は、「不安」や「あせり」につながり、治療や回復の妨げになります。経済的な不安は回復を遅らせるだけでなく、早すぎる復職は、再発の原因ともなります。GLTDの制度は、そうした休職者の「不安」や「あせり」を取り除き、治療に専念させることができます。

GLTDの導入事例

A社(ITサービス業・従業員数900名)

-従業員が全国各地に在籍していることから、福利厚生制度については、勤務地に関わらず平等にその利益を享受できる仕組みを検討したのが背景にありました。

制度の検討にあたっては、福利厚生制度はリテンションプログラムであるという位置づけにし、高いモチベーションで仕事に取り組むには、安心できる制度が必要であるとの観点から、福利厚生制度として必要な要素を下記3点に絞り、具体的な検討を実施しました。

① 全国で勤務する従業員の平等性
② 個人では加入できない補償
③ 従業員だけでなく、家族も安心できるような働く場、環境の提供

A社では、これらの条件を満たす福利厚生制度としてGLTDの導入を決定したそうです。

また、従業員への制度の周知・浸透のために、「ライフステージに合わせて生活や家族を守り、会社と共に成長しよう」というメッセージを伝えたことにより、会社の取り組みを前向きに受け止められ、従業員自身の上乗せ加入の加入率も年々向上しているそうです。

B社(食品製造業・従業員数350名)

-福利厚生制度として海外旅行制度の運用をおこなっていましたが、従業員にとって本当に必要な制度への見直しを検討したことがGLTD導入の動機でした。導入にあたり「自社オリジナル長期休業補償制度」とし、会社負担の補償だけでなく、従業員それぞれのニーズに合わせられるよう、選択性の任意加入プランを用意しました。

また、労働組合の協力も得ることができ、労使ともに進めている取り組みであることを強調しながら従業員へ制度の周知を行った結果、過半数以上の従業員が任意加入プランへも加入するなど、従業員に喜ばれる福利厚生制度として認知されるまでに至りました。

従業員からは「自分にもしものことがあった場合の住宅ローン返済の心配がなくなった」、「既存の医療保険ではカバーしきれない自宅療養についても支払い対象になるため安心できる」などの声が届いているそうです。

まとめ

GLTDは福利厚生制度としての平等性を担保しながら、個々の従業員が抱える「自分にもしものことが起きた際の不安」を解決することに役立つ福利厚生制度です。

従業員が必要としている「病気やケガの時に安心して治療に専念できる環境」の支援を制度化することで、従業員のモチベーション向上やリテンション向上に役立ち、従業員の会社への信頼感を高め、さらに勤労意欲や帰属意識を高めることに繋がります。

導入にあたっては、原資の確保だけでなく、プラン設計や従業員への制度周知など、様々な検討事項がありますが、GLTDを専門に取り扱う保険代理店から必要な支援を得られます。健康経営の施策のひとつとして、相談をしてみてはいかがでしょうか。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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