人事と経営をつなぐ「エンゲージメント」と生産性の関係について解説!

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国内外での企業間の競争が激化している中、いかに生産性を上げていくかはどの企業でも課題に挙がっています。その方法のひとつが、従業員のエンゲージメントを高めることです。そこで今回の記事では、従業員エンゲージメントの高め方やその重要性について説明します。

従業員エンゲージメントとは?

まず、従業員エンゲージメントという言葉についてその意味を見てみましょう。従業員エンゲージメントを一言にまとめると、「企業に対する従業員の愛着心」となります。エンゲージメントが高い状態にあると、従業員は自ら「この企業に貢献したい!」と考えて日々の業務に取り組みます。

従業員満足度と従業員エンゲージメントの違い

エンゲージメントは従業員満足度とは異なる考え方です。従業員満足度は言葉の通り、職場環境、福利厚生や給与、休暇制度などに対する従業員の満足度を指します。一方で従業員エンゲージメントは、所属する企業に貢献したいと感じる度合いを表します。

たとえ従業員満足度が高くても企業のために頑張りたいと考えているとは限りませんが、従業員エンゲージメントが高い場合は貢献意欲に直結するということです。

なぜ従業員エンゲージメントが人事と経営をつなぐのか

従業員のエンゲージメントが高い状態だと一人ひとりが意欲的に働くようになるため、組織全体の生産性も高まります。またそれだけでなく、企業に愛着のある従業員が多ければ離職率も低下します。その結果、優秀な人材を維持することにもつながっていくでしょう。

このようなメリットから、これからの人事は労務管理などの従来の業務に加え、エンゲージメントを高めていく施策を打っていくことが重要だと言えます。

エンゲージメントは労働生産性を高める最重要課題

エンゲージメントと生産性の関係性についてもう少し見てみましょう。今後超高齢化社会を迎え労働力不足が予想される中、生産性の向上にはどの企業もより一層力を入れていくことになります。

その方法の一つがエンゲージメントの向上なのですが、実際に、エンゲージメントを高めることで企業の業績を向上させられたという調査結果もあります。たとえば、世論調査及びコンサルティングを行っている米ギャラップ社の調査では、エンゲージメントが高い人は、エンゲージメントが低い人に比べて生産性が2割ほど高いという結果が出ています。エンゲージメントの向上は、これからの企業の成長のために欠かせない課題であると言えます。

従業員エンゲージメントに影響する要素

そもそも、エンゲージメントの向上には何が作用するのでしょうか。まずはリーダーシップです。なぜリーダーシップが重要なのかというと、企業と従業員をつなぐ役割を担っているからです。

企業または経営者の掲げるビジョンを、リーダーが現実の業務に落とし込むことで、従業員は日々の業務に意味を見出しやすくなります。企業が掲げるビジョンと、従業員が仕事において大切にしたいと考えていることの方向性や価値観が一致すると従業員エンゲージメントは高まります。

エンゲージメントの向上には、業績の目標を追いかける環境も必要です。これは従業員にとって適度なストレスとなり、目標を達成したら評価されるというモチベーションにもつながります。とはいえ、単に忙しすぎるだけではエンゲージメントは高まりません。

目標を掲げることで成長意欲を刺激し、そのプロセスにおいて適切なフィードバックを与えます。もし従業員がその目標を達成すれば、企業は成功体験の場を提供していることになりますし、仮に目標へ到達しなかったとしても、成長実感を持たせることができれば問題ありません。

重要なのは、仕事そのものや上司・同僚との関係性が良好であることです。

人事部などの担当者は、現場の管理職が部下と適切なコミュニケーションを取りながら、適正な評価がなされるような体制づくりを支援してください。

企業が対外的にどう認知されたいのかというイメージを従業員に持ってもらうということも、エンゲージメントに影響する要素です。BtoCの企業、ここでは仮に自動車メーカーを想像してみてください。

既存ユーザーに対しては引き続き購入してもらえるように、新規の見込み顧客に対してはよいブランドイメージを持ってもらい購入に至るように、テレビCMなどのプロモーションをかけます。高級感を打ち出したり、親しみを持ってもらえる可愛らしいネーミングにしたりと各社各様のコンセプトでブランディングを行います。

こうした企業ブランディングを従業員向けにするとなれば、内部事情を一番知っている人たちなので、より難しいことがわかるかと思います。不祥事などでニュースに取り上げられると、企業やブランドのイメージに悪影響を及ぼします。企業内部にいる従業員は、不祥事として明るみに出なくても「これはよくない」と思うものが存在すれば、それらを日常的に見聞きすることになります。このような状況では「企業に対する愛着心」が湧かないのは必然と言えます。

企業理念として掲げていること、ビジョンやミッションなどと現場に乖離がないか、従業員に認められている自社の価値や、改善した方がよいと捉えられているものが何なのかを突き止めるところから始めてみてはいかがでしょうか。

従業員エンゲージメントを高める方法

それでは、エンゲージメントを向上させるための方法や切り口の例を見てみましょう。

① ワーク・ライフ・バランス
最近よく耳にするようになったワードですが、従業員の仕事と健康、プライベートのバランスを保つことはエンゲージメントの向上にも効果的です。エンゲージメントという単語には「約束」や「婚約」といった意味があります。つまり、従業員と企業の関係性に着目した概念であり、従業員に対する企業側からの約束事も非常に大切です。一点注意が必要なのは、ただ単に仕事の負担を軽くすればいいというものではなく、本質的に従業員の幸福を考え抜いた結果としての施策としなければなりません。

② 適切な人事評価
従業員自身が納得感を持ち、やりがいや成長意欲につながるように現場の管理職が目標設定の段階から伴走することが大切です 。そして、設定した目標を達成した際にも本人が納得できる適正な評価がなされるとエンゲージメント向上につながります。選手の成長を支援してチームを優勝へと導く、名監督と称される人物をイメージするとよいでしょう。人事評価制度の担当者は、このような流れがスムーズに進む制度設計となるように、絶えず現場の様子を注視することが重要です。

③ コミュニケーションの活性化
近年、仕事においても価値観は多様化してきています。これは、これまでより一層周りの人とのコミュニケーションが必要になっているということでもあります。相互理解を促進する為に、コミュニケーションを活性化するスペースを設けたり、通常の業務ではあまり接点のない従業員同士が交流できるような機会を提供したりと様々な方法があります。

④ 人材の配置、育成、採用
従業員を適切な部署に配置するのは当然で、既にできていると思われる担当者も多いでしょう。しかし、従業員自身も気が付いてない隠れた才能を引き出すことは容易ではありません。最近注目されているタレントマネジメントの観点なども取り入れながら、常にブラッシュアップしていく意識を持つことが重要です。また、従業員がより大きな成果を出して達成感や適合感を感じられるようにするには、人材育成の方法についても見直す必要があります。採用については学歴や経歴といった表面的な情報だけでなく、企業と相互理解できるような価値観を持った人材を厳選することが求められます。このような従来の人事業務についても、エンゲージメントの観点から改めて見直してみることで従業員エンゲージメントの向上につなげることが期待できます。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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