近年のデジタル化・ペーパーレス化の流れを受け、2025年から健診結果報告の電子申請が義務化となりました。健診結果のデータ化は、健診業務に関するさまざまな課題の解決につながるほか、近年注目の高まる「健康経営」の推進という点でも大きな役割を果たします。本記事では、健診結果をデータ化するメリットや方法について詳しく解説します。
目次
健診結果のデータ化が進む背景

はじめに、健診結果のデータ化が進む背景的要因を紐解いていきましょう。
定期健康診断結果報告の電子申請が義務化
2025年1月1日から、労働安全衛生法に関連する手続きの一部について、電子申請が義務化されました。労働安全衛生規則(第51条の4)に基づき、常時50人以上の従業員を使用する事業所は、健診結果の報告義務を負っています。
「定期健康診断結果報告」をはじめ、ストレスチェックの結果報告、労働者死傷病報告など複数の手続きが電子申請義務化の対象となりました。2025年7月現在、経過措置として電子申請が難しい場合に限り、紙での報告も認められています。ただし、将来的には完全電子化を見据えているため、所定の電子システムを利用した報告ができるよう、企業は早めの準備と対応が必要です。
参考:厚生労働省「労働安全衛生関係の一部の手続の電子申請が義務化されます」
「データヘルス」「コラボヘルス」の推進
社会全体で進むデジタル化の動きは、医療・ヘルスケア領域にも広がっています。国は「データヘルス改革」として医療や健診データを利活用できる仕組みの整備を進めています。例えばマイナンバーカードと保険証の連携もその一環です。
こうした中で、健康保険組合等の保険者・事業主が積極的に連携し、従業員やその家族の健康づくりを効果的・効率的に実行する「コラボヘルス」を推進する動きも強くなっています。コラボヘルスの実現には、健診結果や医療情報を正確に共有できる仕組みが不可欠であり、そのためには健診データのデジタル化が前提となります。
一人ひとりの健康状態に応じた的確なアプローチを行うには、情報の一元管理と連携が欠かせません。健診結果のデータ化は、保険者や企業、健診機関など関係者間の連携を支え、質の高いヘルスケアサービスの提供に向けた基盤となるものです。
健診結果のデータ化のメリット

健診結果をデータ化するメリットは、担当者の負担軽減や業務効率化だけにとどまらず、企業におけるヘルスケアの取り組みの質向上にも寄与します。
健診担当者の負担軽減
健康診断の実施・記録・保存は、法令で定められた企業の義務です。一般健康診断の結果は5年間の保存が義務づけられていますが、国は「生涯を通じた自己の健康管理」の観点から、できる限り長期間の保存を求めています。
しかし、紙での管理には膨大な手間とスペースが必要です。従業員数が多ければ、配布や郵送、仕分けや照合、ファイリング、コピーなどの事務作業はより煩雑になる場合が懸念されます。データ化することで、健診担当者の作業負担を大きく減らせるでしょう。
業務効率化
健診結果をデータで管理することにより、従業員の健康管理に関するさまざまな業務効率が向上します。例えば、産業医との面談で過去の結果が必要になった場合でも、検索機能を用いてすぐに必要な情報を見つけられるほか、過去のデータとの比較も簡単です。さらに、勤怠データや休職・復職情報など、ほかの人事データと連携させると、従業員の健康状態と就労状況の把握がスムーズになり、より包括的な健康管理が実現します。
有所見者へのスムーズなアプローチ
紙での管理は、健診で異常があった有所見者やハイリスク者の特定に時間がかかり、対応が遅れる場合もあるでしょう。健診結果をデータ化すれば、基準値を超える項目を抽出し、早期対応が必要な従業員をすぐに把握できるようになります。医療機関での治療や保健指導、産業医などとの面談にスムーズにつなげることで、健康状態の悪化防止に寄与します。
個々の状態に合わせたアドバイスの提供
従業員一人ひとりの健康状態をタイムリーかつ正確に把握できる点もメリットです。毎年のデータが蓄積されることで経年変化がわかりやすくなるほか、改善/悪化の傾向も察知しやすくなります。これらのデータを活用すると、個々の健康状態に応じてパーソナライズされた健康管理のアドバイスや生活習慣改善の提案が可能となります。従業員側も、いつでも自分自身の健診結果を閲覧できるため、ヘルスケアに関する能動的な行動の喚起、意識改善が期待できるでしょう。
職場改善・健康経営の加速
健診結果データの一元的な管理によって、組織全体の健康課題を浮かび上がらせます。例えば、データを部署ごと、年代ごとに集計し、健診結果の傾向を分析することも可能です。
従業員の心身の健康に配慮した、より効果的な施策の実行につなげることは、生産性や成長性の高い組織を目指す「健康経営」の推進に貢献します。データヘルス、コラボヘルスといった国の取り組みにも沿った形で、従業員の健康と企業の成長を両立できる基盤づくりが実現します。
健診結果をデータ化する方法

健康診断結果をデータ化する方法は、Excelなどでの手入力管理、OCRスキャナー活用、外部サービス委託などが挙げられます。ただし、手入力は効率が悪く、OCRスキャナーは正確性に欠けるリスクもあります。
Excelなどに入力する
電子化に対応している医療機関からCSV形式などで結果を提供してもらい、担当者がExcelなどの汎用ツールを使用し、手作業で管理する方法です。しかし、どうしても工数がかかることと、データの活用やスムーズな情報共有には向かないため、効率的なデータ管理とはいえないでしょう。
OCRスキャナーを活用する
紙の健康診断結果をデータ化するには、OCR(文字認識)技術を搭載したスキャナーの活用も有効です。手入力の手間を省け、作業効率が大幅に向上します。一方で、文字のかすれやレイアウトの複雑さによっては読み取り精度にばらつきが出る可能性もあります。そうした不安がある場合は、健診結果をデータ化してくれる外部サービスの利用も1つの選択肢です。ただ、データ化の工数を省くことはできても、その先の分析や施策に向けては産業医との連携が求められます。
外部に委託し一元管理する
健診業務全般の効率化および健康データの活用を重視している場合は、外部委託がおすすめです。外部委託はデータの活用や分析をしやすく、企業の産業保健活動の推進に役立ちます。
健診結果データの分析・集計・閲覧ができるだけでなく、サービスやシステムによっては健診予約、判定基準の統一、再検査の受診勧奨、報告資料の作成など幅広い業務に対応可能です。また、全国平均データと自社データとの比較によって、優先的に取り組むべき課題の洗い出しが可能なものもあります。豊富なノウハウを持つ専門機関の協力を得ることで、健康施策の立案・実施、効果検証のPDCAサイクルを強力に回していけるでしょう。
紙の健康診断データのデータ化や健康診断業務の効率化をサポートする「アドバンテッジ ヘルスケア」は、1社1社異なるニーズに最適な健診システムをご提案します。健診データの見方や活用方法のご支援まで手厚くサポートします。
健診結果のデータ化における内製と外部委託のメリット/デメリット

健診結果のデータ化には「内製」と「外部委託」の2つの選択肢があります。内製はコストを抑えやすい反面、作業負担や専門知識が必要で、規模が大きい企業には不向きです。一方、外部委託は導入コストがかかるものの、作業の効率化に加え、健康施策の分析・運用支援まで可能なため、費用対効果の高い選択肢といえます。
内製のメリットとデメリット
内製のメリットとデメリットは以下の通りです。
【メリット】
別途システムを導入する必要がなくコストが抑えられます。
【デメリット】
完全な内製は、人事担当者の負担が大きいです。医療機関によってフォーマットや判定基準が異なる場合もあり、健診結果の読み取りや分類にはある程度知識が必要です。完全な自動化は難しく、効率化の効果は限定的な可能性があります。小規模な事業所であれば対応できるかもしれませんが、従業員数が多いケースでは運用しづらいでしょう。
外部委託のメリットとデメリット
外部委託のメリットとデメリットは以下の通りです。
【メリット】
外部委託により圧倒的な工数削減が可能です。サービスによっては、健康課題の抽出や分析、健康施策のPDCAのサポートを受けられ、健康経営の推進にもつながります。
【デメリット】
導入・運用にはコストがかかります。ただし、費用対効果は高いといえるでしょう。
健診結果をデータ化する場合の注意点

最後に、健診結果をデータ化する際の注意点を解説します。
データ管理への従業員の理解・同意
個人情報保護法において、健康診断の結果は「要配慮個人情報」に該当します。そのため、本人の同意なく情報を取得したり、第三者に提供したりすることは原則として禁じられています。
健診結果をデータ化するにあたっては、従業員に十分な説明を行い、同意を得ることが必要です。人事情報との紐づけや、クラウド上での管理について心理的な抵抗や不安を感じる従業員もいるため、事前に説明会を開催するなどして丁寧に周知しましょう。誰が、どの範囲の情報を閲覧できるのか、個人の健康管理にどのようなメリットがあるのかを伝えると、協力を得られやすくなります。
フォーマットや判定基準の統一化
健診結果を複数の医療機関から受け取る場合、フォーマットや判定基準の平準化が課題となりがちです。例えば、同じ数値であってもクリニックによって「基準値内」になったり「要精密検査」になったりと、判定基準が異なるために混乱を招く場合もあります。フォーマットや判定基準の統一が可能な外部サービスを選ぶことで、スムーズな運用が期待できます。
セキュリティ対策・情報漏洩対策の強化
上述のように、健診結果は従業員のプライベートな情報が含まれています。自社で内製する場合は、サーバーのセキュリティ対策、適切なアクセス制御やログ管理など、情報漏洩が発生しないよう万全の体制を整えましょう。また、健診担当者や閲覧権限を持つ管理職らに対しても、個人情報の適切な取り扱いを喚起し、意識向上を図ります。
【外部委託】自社のニーズとの一致度
外部委託を検討する際には、健診結果をデータ化するにあたり、どのような課題感があるのか、どのような目的で活用したいのかを明確にし、それに対応できるサービスを選ぶことが重要です。サービスによって、データ化に要する期間や分析機能の充実度、カスタマイズ性は異なり、中にはほかのサービスと連携できるシステムもあります。予算感や現状の業務フローとの整合性などを考慮して選定しましょう。
業務効率化と健康経営の実現へ

健診結果のデータ化によって得られるメリットは、担当者の負担軽減、業務効率化だけにとどまりません。集計した情報を分析・活用し、よりよい職場づくりや健康施策に反映していくことで、従業員の健康管理の質向上、ひいては健康経営の実現につながります。健診結果は個人情報であり、慎重な取り扱いが求められます。従業員への十分な説明と同意の取得は欠かせません。自社に合った方法を選び取り、データを有効に利活用していきましょう。