2026の文字が書かれたサイコロ

【健康経営銘柄2026】申請スケジュールや改訂ポイント、対策は?2025年の選定企業も紹介

Facebookでシェア ツイート
「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

健康経営銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で健康経営の取り組みに優れた企業を選定し、公表するものです。今回は、健康経営銘柄2026の選定スケジュールや変更点などを解説します。併せて、2025年度の評価基準の振り返りと、選定企業における取り組み事例をご紹介します。

健康経営銘柄とは?

健康経営銘柄とは

はじめに、健康経営銘柄と、健康経営について簡単におさらいしておきましょう。

健康経営銘柄とは

健康経営銘柄とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を選定・公表する顕彰制度です。投資家に対して「長期的な企業価値向上を目指す、魅力的な企業」であることをアピールし、企業が健康経営に積極的に取り組むことを促す目的があります。

2014年度から東京証券取引所の上場企業を対象とした「健康経営銘柄」の選定が始まり、2016年度からは「健康経営優良法人認定制度」がスタートしました。制度を通して、健康経営を推進する企業を“見える化”し、社会的に評価される環境をつくることで、企業の健康経営の促進を図るねらいがあります。

参考:経済産業省「健康経営銘柄2026」及び「健康経営優良法人2026」の申請受付を開始しました

健康経営優良法人と健康経営銘柄の違い

健康経営優良法人と健康経営銘柄は、選定対象と基準に違いがあります。
従業員の健康を経営の基盤と捉え、戦略的に推進するすべての法人が対象となるのが「健康経営優良法人」です。この制度は、大規模法人と中小規模法人の2つの部門に分かれており、特に優秀な取り組みを行った上位500社には、それぞれ「ホワイト500」や「ブライト500」という独自の称号が与えられます。

これに対し、「健康経営銘柄」は、選定条件がより限定的です。まず「健康経営優良法人」に認定された大規模法人のうち、さらに東京証券取引所に上場している企業から、特に優れた企業が選ばれます。

区分健康経営優良法人健康経営銘柄
対象従業員の健康管理に取り組む法人全般東証に上場している大規模法人
選定方法大規模法人と中小規模法人からそれぞれ認定健康経営優良法人(大規模法人部門)のうち、特に優れた企業を選定

参考:経済産業省「健康経営とは」

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康への配慮を、将来的な収益や生産性の向上につながる投資と捉え、経営戦略として実践することです。企業が理念に基づき従業員の健康維持・増進につとめることで、組織の活性化や従業員の活力向上、ひいては業績や企業価値の向上といった効果が期待されます。

申請者の増加や注目が集まる背景

健康経営優良法人認定制度の申請数は、大規模法人部門、中小規模法人部門ともに年々増加しています。健康経営への関心が高まっている背景には、従業員の働き方や価値観が一層多様化していることに加え、人手不足への対応として「働き続けたい」と感じてもらえるような職場づくりが急務となっていること、コロナ禍を経たことによる健康意識の高まりなどがあります。

2026年健康経営銘柄の選定スケジュール

スケジュールに書き込む手元

健康経営銘柄2026の選定スケジュールは以下の通りです。

2025年7月18日:健康経営推進検討会での報告(健康経営度調査票の素案公開)
2025年8月18日:健康経営優良法人申請受付開始(健康経営度調査への回答とエントリー)
2025年10月10日:大規模法人部門申請受付終了(中小規模法人部門は10月17日)
2025年11月上旬頃:申請料請求書の送付(~12月下旬頃振込〆切)
2025年12月末頃:大規模法人部門フィードバックシート速報版送付
2026年3月中旬頃:健康経営優良法人認定・健康経営銘柄発表

参考:健康経営優良法人認定事務局「令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告」

【健康経営銘柄2026】健康経営度調査票の改訂ポイント

水色の背景に矢印と電球のサイコロが並んでいる

健康経営銘柄は、提出する健康経営調査票の各種指標の評価を通してスクリーニングや加点を行い選定されます。各業種で最も順位が高い企業に加え、その企業の平均点より得点が高い企業の中からも選定が行われます。選定要件は変更される場合があるため、あらかじめ確認しておくことが重要です。まずは、健康経営2026(2025年度)健康経営度調査票の改訂ポイントを詳しく解説します。

参考:健康経営優良法人認定事務局「令和7年度 健康経営度調査(素案)」

主な改訂ポイント

今年度の健康経営度調査票において、注目すべき改訂ポイントは以下の3つです。企業の健康経営への取り組みの深さ・質をより的確に測るため、大きな設問改訂が行われました。

①「ウェルビーイング・DE&Iの観点からの健康経営推進」がより強調して問われるように。
女性の健康、高年齢者への対策などを指す『性差・年代を踏まえた取組状況』が評価項目に追加されました。

②「経営層の関与」に関する設問は、経営層の関与の仕方・プロセスを具体的に問うものへ改訂。
健康経営のPDCAサイクルに対し、経営層がどの程度関与しているか、会議体を確認する問いが追加されました。

③「評価・改善」は”健康風土”の醸成と、効果検証への関係者への巻き込み度合いを問う設問に改訂。
健康経営全体の目標に関するKPI・KGIの検証に誰が関与したのかを問う設問の追加、組織全体に影響する効果検証に関する問いが新設されました。

参考:健康経営優良法人認定事務局「令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告」

ポイント①認定要件の変更

認定要件の変更は、以下4点が予定されています。

①ステークホルダー全体に対する健康経営の在り方
ステークホルダー全体への健康経営の浸透を図る取り組みとして、「国内外グループ企業」および「取引先・他社」への健康経営の支援の「両方」を行っていることが認定の必須条件に変更。また、取引先や他社に対し「具体的にどう支援しているか」を問う内容となりました。

②メンタルヘルス関連の認定要件項目名変更
メンタルヘルスの取り組みが従業員自身の能力発揮につながることを踏まえ、項目名が「心の健康保持・増進に関する取り組み」に変更され、設問と選択肢が修正されました。また、心の健康に関して、新たにデジタルツールを活用しているかを確認する設問が追加されました。

③DE&I・ウェルビーイング対応の強化
「性差・年齢に配慮した職場づくり」を健康経営の取り組みの土台として再定義。エイジフリーガイドラインに基づいて質問・選択肢が修正され、認定要件の項目が追加されました。

④健保組合・保険者との連携に関する必須要件の変更
40歳以上の健診データ提供は誓約事項へ移行。また、40歳未満の従業員の健診データ提供が新たに必須要件に追加されました。

参考:第3回 健康経営推進検討会 参考資料(令和7年度 健康経営度調査表(素案))
参考:健康経営優良法人認定事務局「令和7年度 健康経営優良法人認定事務局の活動及び申請認定に関するご報告」

ポイント②個別設問の変更

個別設問の変更は、以下の通り実施される予定です。

①健康経営推進方針・目標・KGIの整理
「健康経営ガイドブック」に基づき、設問・選択肢が改訂。経営方針と連動した中長期KGI(3〜5年)と短期KPIの設定を推奨します。健康経営の目標・KGI検証に誰が関与しているかを確認する新設問(SQ)が追加予定です。

②健康経営の理解促進
経営トップの関与度合いを問うため、選択肢が追加。Q17「社内発信(イントラなどで共有)」、Q18「社外開示」双方に経営トップ自ら発信することを重視しています。

③経営会議での議題化
取締役会と経営会議の区分は取りやめとなり、経営レベル会議での報告・決定事項を問う形式へ変更。議題化した「回数」は回答不要になります。

④性差や年齢に配慮した職場づくりに関する管理職・従業員への教育
管理職・従業員への教育内容として、「性差・年齢に配慮した職場づくり」に関連する選択肢が追加されます。

⑤仕事・介護などとの両立支援
育児・介護休業法の改正を踏まえ、選択肢が修正されます。また、制度の利用状況について確認する設問が新設。仕事と治療の両立支援についても、選択肢が修正されています。

⑥仕事と治療の両立支援
両立支援の取り組みに関する選択肢が修正されています。

健康経営銘柄2026取得に向けた対策ポイント

棒グラフや電球などが描かれた積み木

前述してきた改訂ポイントを踏まえ、健康経営銘柄2026取得に向け、今後は以下のポイントについて対策しましょう。

戦略的な推進方針・目標の策定

経営戦略における健康経営の​立ち位置を明確化することが求められています。経営方針と連動した推進方針、目標(KGI)を明確に定めましょう。単なる健康施策の羅列ではなく、経営層から従業員まで、一貫性のあるストーリーで取り組みの意義を示すことが重要です。この戦略的なアプローチが、選定基準の高い評価につながります。

経営層を巻き込んだPDCAサイクルの実践

健康経営には、経営層の積極的な関与が不可欠です。PDCAサイクル全体に経営層を巻き込みましょう。また、健康保険組合や産業医、保健師といった専門家との連携も、質の高い取り組みを証明するうえで重要です。

「誰もが働きやすい職場づくり」に向けた環境整備

女性や高齢者、外国籍といった多様な従業員が活躍できる職場環境を整えましょう。それぞれの健康課題や働き方のニーズに対応した施策は、企業価値を高める重要な要素であり、健康経営銘柄の評価項目にも含まれています。多様な個性を持つ従業員がそれぞれ尊重され、誰もが働きやすい環境を構築することが、選定のカギとなります。

独自の健康風土の醸成

他社の成功事例を参考にしつつも、自社独自の健康風土を築き上げることが重要です。自社の事業特性や従業員の声を反映させたユニークな取り組みは、単なる表面的な施策ではなく、持続的な企業文化として評価されます。従業員の健康課題を踏まえた健康投資を行い、自社ならではの健康風土を醸成しましょう。

健康経営銘柄2025における改訂ポイント

水色の背景に年代が書かれ虫眼鏡で映す手元

前年度の健康経営銘柄2025についても振り返っておきましょう。
健康経営銘柄2025の改訂では、より成果と結果を重視する評価体系へと進化しました。国が抱える社会課題を背景に、単なる取り組み内容だけでなく、それが実際にどのような成果を生み出したかを問う設問が拡充・整理されています。また、健康経営の対象となる従業員の範囲を広げた取り組みが評価されるようになりました。

健康経営銘柄2025の主な改訂ポイント

・取り組みの可視化・質の向上
新設された設問では、方針策定のプロセスや、PHR(健診情報やライフログ等)の活用状況が問われました。また、40歳未満の従業員データ提供に加点が設けられるなど、幅広い年齢層への対応も評価対象となりました。

・新たなマーケットの創出
健康経営の国際的な普及促進という国の方針と連動させる形で、各企業の対応状況を具体的に問う設問が追加されました。

・健康経営の社会全体への浸透・定着
育児・介護と就業の両立支援が評価対象になるなど、社会的な課題への対応に関する設問の拡充・変更、および経営の取り組みに含む対象範囲が拡大されました。

今後企業に求められる対応

これからの時代は、人材の個性を強みとして活かす企業が成長します。そのため、人的資本経営やウェルビーイング経営といった、従業員を重視する経営戦略の中で、健康経営をどのように位置づけ、どのような役割を持たせるのかを、経営層と対話して明確に定義することが不可欠です。2025年度の改訂内容については、以下の資料で詳しくご確認いただけます。

健康経営銘柄2025に選ばれた企業

2025年3月、経済産業省は健康経営銘柄2025を発表しました。今回は、29業種から53社が選定されました。選定企業は以下の通りです。

「健康経営柄 2025」選定企業
「健康経営柄 2025」選定企業02

出典:経済産業省「健康経営銘柄2025」に53社を選定

2025年健康経営銘柄に選定された企業の取り組み事例6選

水色の背景にCASE STUDYの文字と虫眼鏡で覗くイラスト

最後に、2025年の健康経営銘柄に選定された企業の中から、6つの取り組み事例をご紹介します。

マルハニチロ株式会社

マルハニチロ株式会社は、自社の強みであるDHA含有製品を活用した施策を6年連続で実施し、従業員の健康増進と社内コミュニケーション活性化や自社製品の健康価値の再認識につなげています。また、メンタルヘルス対策や1on1で心理的安全性の高い職場環境を構築しています。

KDDI株式会社

KDDI株式会社は、「人財ファースト企業への変革」を掲げ、健康経営を推進しています。全従業員向けにカウンセラー面談を年2回実施するほか、スポーツイベントや健康セミナーも開催。これにより、高ストレス者の減少や従業員エンゲージメントの向上といった成果が得られました。

TOTO株式会社

TOTO株式会社は、健診結果を活かした健康増進施策で、休業者数や有所見率を低く保っています。PHRサービスや健康イベント参加率も上がり、健康風土が定着。長時間労働の減少や有給休暇の取得率向上、多様な働き方の定着など、施策が多方面で効果を発揮しています。

花王株式会社

花王株式会社は年間を通じて多彩な健康支援を実施し、従業員とその家族を巻き込むことで、自発的な健康づくりを促しています。この取り組みの結果、社内調査でも健康経営がワークエンゲージメントや生産性向上につながっていることが明らかになりました。

愛三工業株式会社

愛三工業株式会社は「健康チャレンジ活動」を推進し、禁煙応援などで喫煙率を5年間で32%から24%に減らしました。無料の人間ドック制度(休暇新設・5大がん検診をセット)も新設し、従業員同士の声かけで受診率が向上。これらの取り組みは離職率の改善にもつながり、従業員の健康意識を高めることに成功しています。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント

当社アドバンテッジリスクマネジメントは、「健康経営銘柄」に4年連続で選定、「ホワイト500」は8年連続で認定されました。自社のシステムを活用し、従業員の健康データを一元管理・可視化することで、効率的かつ実効性の高い健康経営を推進しています。法定を超える年2回のセンサス実施に加え、月1回のパルスサーベイを行い、状態変化を継続的にモニタリング。施策の効果検証・改善のPDCAサイクルを効果的に実現しています。当社で行っている取り組みなど、詳細についてはこちらで紹介しています。

健康経営銘柄の選定に向け戦略的な取り組みを

顕微鏡や円グラフなどが描かれた積み木

健康経営銘柄に選定された企業は、自社の従業員の健康管理にとどまることなく、健康経営推進の「トップランナー」として、社会全体に好影響を与え、導いていく役割が求められます。健康経営に求められる内容は年々アップデートされているため、評価基準や質問項目などの変更点を見逃すことなく対応していく必要があります。2025年の評価基準を踏まえて、2026年の選定に向け戦略を立てていきましょう。

(Visited 2,815 times, 1 visits today)

【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
アドバンテッジJOURNALは、働くすべての人へ「ウェルビーイングな働き方と組織づくり」のヒントを発信するメディアです。導入企業数3,200社/利用者数600万人を超えるサービス提供実績と、健康経営銘柄に4年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

この著者の記事一覧

Facebookでシェア ツイート

関連記事RELATED POSTSすべて見る>>