多くの企業が「健康経営」の重要性を認識しつつも、施策が形骸化してしまうという課題に直面しています。そのような中、総合エンジニアリング企業の株式会社タマディックは、データ活用と組織的な仕組みづくりによって着実な成果を上げ続けています。今回は、同社の取り組みを牽引する代表取締役社長の森實敏彦様に、成果を出す健康経営の秘訣について詳しくお話を伺いました。
聞き手を務めるのは伴走支援を行う弊社代表取締役社長の鳥越慎二です。

(写真左)株式会社アドバンテッジリスクマネジメント 代表取締役社長 鳥越 慎二
株式会社タマディック(https://www.tamadic.co.jp/)
事業内容
1 航空宇宙、自動車分野における開発・設計・生産技術・試験解析
2 精密機器、FA・ロボティクス、搬送装置などの開発・設計
3 各種専用機および電気制御機器などの設計・製造・販売
4 電気・電子機器の開発・設計
5 ソフトウェア、ファームウェアの開発
従業員数
1,217名(2025年4月1日現在)
ご利用いただいているサービス
・アドバンテッジ タフネス(スタンダードエンゲージメントプラス)
・アドバンテッジ ピディカ
・健康経営支援サービス
・社員研修プログラム(EQ)
※文中記載の法人名・組織名・所属・肩書きなどは、すべて取材時点(2025年9月)での情報です
株式会社タマディック様のサービス導入のPOINT
POINT1
創業時から「社員の健康は会社の財産」と捉え、経営理念として継承
POINT2
データ活用による組織状態の可視化と、課題に応じた的確な施策の実行
POINT3
「健康チャレンジ!」や短期効果測定ツールを活用し、参加率・健康指標ともに改善
目次
社員の健康は会社の財産という創業時から受け継がれる確固たる理念
鳥越:御社はオフィスにサウナを設置されるなど、ユニークな取り組みが話題ですが、まずは森實社長が健康経営に注力されるようになったきっかけや、想いの部分からお聞かせいただけますでしょうか。
森實:創業者である祖父の代から受け継がれている理念に「技術者が健康で安心して働ける職場をつくる」があります。エンジニアがやりがいを持ち、長く生き生きと働くことこそ、会社の成長の源泉であり、社員の健康は重要な財産だと捉えています。そして私自身の体験も影響しています。10年ほど前からサウナに通い続けており、心身の疲れが取れて仕事効率が上がるのを実感しました。健康診断の数値も改善し、ポジティブな人間関係も築けたことから、この良い影響を自分だけでなく社員にも共有したいと考えるようになりました。
鳥越:創業以来の理念が、現在のウェルビーイング経営に繋がっているのですね。エンジニアリング業界は人材競争が激しい分、長く活躍してもらうことが重要だと思います。人材という観点で健康経営の必要性を強く感じた具体的な出来事はありましたか。
森實:弊社はありがたいことに離職率が低く、会社に満足して長く勤めてくれる社員が多いのが特徴です。その一方で、過去には生活習慣に起因する健康問題から体調を崩し、やむを得ず離職に至った優秀な社員もいました。能力も意欲も十分にある人材が健康を理由にキャリアを断念するのは、本人にとっても会社にとっても大きな損失です。こうした経験から、健康を個人任せにせず、組織として支援する仕組みが不可欠だと強く認識するようになりました。

データ活用により健康診断の総合判定Aを得る社員が毎年約2%ずつ増加
鳥越:健康経営に関する課題はどのように解決されたのでしょうか。
森實:転機となったのは「アドバンテッジ タフネス」サービス導入です。ストレスチェックのデータを活用し、組織の状態を「見える化」できるようになりました。
エンゲージメントやコミュニケーションなどの項目ごとに強みと弱みを数値で把握できるようになり、まさに「組織の健康診断」をしている感覚です。
取り組みの結果、現場マネージャーも闇雲に悩む必要がなくなりました。例えば「仕事量の問題ではなくコミュニケーション不足」「評価制度への納得感が低い」といった具体的な課題を、客観的に特定できるようになったのです。これにより、場当たり的に飲み会を増やすといった対症療法ではなく、根拠ある打ち手を検討できるようになりました。
鳥越:弊社のストレスチェックは解像度高く把握ができる設問範囲が広い特徴がありますが、まさに課題をデータで特定し、健康経営の第一歩を踏まれていますね。実際にブライト500を4年連続で取得されていますが、単にデータを得るだけではそこまで継続的な評価は得られないはずです。どのように具体的なアクションにつなげ、効果測定まで回されてきたのでしょうか。
森實:ここでもアドバンテッジリスクマネジメントさんの伴走支援が大きな役割を果たしています。課題が明らかになった部署には研修を実施し、マネージャー自身が解決策を考えるプロセスをサポートしていただいています。さらに年1回の調査では効果が見えるまでに時間がかかるため、「アドバンテッジ ピディカ(ADVANTAGE pdCa)」という短期間で効果測定できるツールを導入し、PDCAサイクルを高速で回しています。まずテスト部門で施策を試し、すぐに効果を検証し、成果が確認できれば全社に展開する。この一連の流れをワンストップで支援いただける点が、施策が形骸化せず定着している理由です。
加えて、組織的アプローチと並行して「健康チャレンジ! !」という制度も実施しています。
例えば「体重を100g減らすと会社が100円で買い取る」「ウエストを1cm減らすと1,000円で買い取る」といった仕組みを導入し、楽しみながら健康意識を高められるようにしました。さらに「良質な睡眠を取ると報奨金が出る」といった施策も加え、日常的に健康を意識できる仕掛けを整えています。当初2割ほどだった参加率は今では全社員の約65%に増え、その半数以上が目標を達成しています。結果として、健康診断で総合判定Aを得る社員は毎年約2%ずつ増加し、「健康チャレンジ!」参加者の肥満率は約48%から27%にまで低下しました。こうした取り組みにより、社員の健康が改善されるだけでなく、医療費の削減という経営的なメリットにもつながっています。

日本で一番ウェルビーイングなエンジニアリング会社を目指す
鳥越:経営トップの強い想いと、それを支えるデータに基づいた仕組みが見事に噛み合っていると感じます。最後に、御社のウェルビーイング経営の今後の展望についてお聞かせください。
森實:現在策定中の中期経営計画では「高付加価値なエンジニアリング」と「技術者のウェルビーイング」を両輪として高めていく方針を掲げています。お客様や社会に貢献できる質の高い仕事を提供し、その担い手である社員が心身ともに豊かで安心して働ける環境を整える。この両立を高いレベルで実現し、将来的には「日本で一番付加価値が高く、かつ日本で一番ウェルビーイングなエンジニアリング会社」を目指しています。簡単ではありませんが、これまで培ってきたデータと経験を活かせば必ず実現できると信じています。
鳥越:本日は貴重なお話をありがとうございました。御社の取り組みは、日本における健康経営をさらに前進させるモデルケースになると感じました。今後もぜひ伴走させていただければ幸いです。


