若手育成のためのOJT研修のポイントとは?

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OJTとは

若手社員育成の主な手法にOJT(On The Job Training)があります。OJTとは、先輩社員が新入社員に対して、実際に現場で業務を行いながら知識やスキルを教えていく研修です。昔から日本企業の職場では当たり前のように行われてきた教育スタイルであり、平成28年の厚生労働省の資料でも、約7割の企業がOFF-JTより「OJTを重視する」または「OJTを重視するに近い」と回答しています。

しかし、現実には近年の人材流動化、教える側の人手不足なども影響しOJTの実施率は下がっています。日本生産性本部が2020年に公表した「第 3 回 働く人の意識に関する調査」によると、「以前から OJT は行っていない/受けていない」と回答する人は40%以上をしめており、第4回の同調査でも同じ傾向が出ています。

OJT研修の目的

OJTの目的は、新入社員や異動などで新たに配属された社員を早期に戦力化することです。職務が未経験でも、上司や先輩社員から業務の説明を受け、実際に作業をしてその結果をフィードバックしてもらうことで、新人が効率良くスキルを身につけることができます。

一般にどの業界でも仕事の現場には机上研修では教えることのできない技能やノウハウが存在します。OJTは、実務を進めながら企業内で先輩社員が体得してきた知識、仕事のコツを新人に伝えられるところに意義があります。OJTはノウハウの世代間継承を担っているのです。

人事部門は、OJTを担当する社員に対してOJTの目的と重要性を伝え、自分の役割を認識してもらうことが大切です。

OJT研修のメリットや研修内容

OJTは、コストをかけずに社員の育成ができる点がメリットです。現場で業務をしながら教育するため研修場所を用意する必要もなく、時間や費用もかかりません。また実際の業務を行うことで実践力もつきます。学び→実践→フィードバック→実践の繰り返しなので人がスピーディに成長します。

新人が早期に戦力化すれば企業の生産性に大きく寄与します。コロナ禍以降、リモートワークでOJTを実施する企業も増えましたが、ビジネスチャットでのリアルタイムな質疑応答、時間を決めた短時間Webミーティングなどでコミュニケーションをとれば、適度な緊張感や一体感を維持しながらOJTを進めることができます。

注意点としては、OJT研修の全体のプロセスを最初に提示して新人が指示される業務の意義を理解できるようにすること、業務だけでなく会社全体の情報も積極的に共有することです。とはいえ、テレワークによるコミュニケーションの希薄化を危惧してWeb会議を増やしすぎると業務を圧迫したりストレスになることがあります。

チャットでの対話ができていれば、朝礼、夕礼、場合によっては午後の昼礼を入れるなど1日2~3回程度が望ましいでしょう。

OJT研修で得られるスキル

OJTは教える先輩社員の側にも新たな学びがあります。例えば、伝達力やヒアリング力といったコミュニケーション力、論理的思考力が挙げられます。後輩が一日でも早く戦力となれるような適切な指示の出し方、後輩からの質問に対する対応の仕方を考えるなかコミュニケーション能力が向上し、複雑なことをわかりやすく伝える概念化能力が身につきます。

どの業務から教えていくかを考えるため計画策定力も養われます。さらに、後輩の勤怠についても注意して見ることから労務管理も意識するようになります。何より指導者としての自覚が芽生えます。OJT教育担当を一通り経験すれば、普段の業務では得られないコーチングやティーチングの基礎的なスキルを習得できるでしょう。

OJTは中堅の社員が行うことが多いのですが、将来リーダーや管理職のポジションに就くことを踏まえれば、このような指導経験をつませることには大きな意義があります。

OJT研修のポイント

次に、OJTを実施する際に意識すべきポイント・進め方を説明します。まず、OJTを始めるにあたって、人事担当者は現場から入社3~5年目の中堅社員をOJTの教育担当者として選出します。現場に丸投げせず、現場の管理職や教育担当者との面談を通して適切な人材を選ぶことが大切です。

また新入社員が入社する前に、前年までのOJTの結果を踏まえたワークショップやケーススタディを学ぶ研修を教育担当者に行うことが望ましいでしょう。OJTが始まったあとも定期的に管理職、教育担当者、新入社員との3者面談を実施しましょう。

面談ではOJTの進捗を確認したり困っていることなどをヒアリングし、人事担当者からのフィードバックを行います。新人が順調に育っている場合、本人と指導している先輩社員をきちんと評価することも大切です。面談の内容から必要であれば人材育成の計画を見直します。

まとめ

新入社員の戦力化を目的としたOJT研修。近年では実施する企業が減っているものの人材を早期に戦力化できる優れた研修手法であることはたしかです。また、基本的な業務知識だけでなく、現場のノウハウ、暗黙知を若い世代に継承できる貴重な教育の場でもあります。

OJTはコストがかからず、実施することで新入社員はもちろん、教育担当者の育成スキルを高められる効果もあります。今一度OJT研修の目的やメリットなどを認識し、自社でのOJTの進め方を見直してみてはいかがでしょうか。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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