ラインケアの重要性~メンタルヘルス不調者を出さない職場づくり

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近年、パワハラや業務へのプレッシャーなどでメンタルヘルス不調を訴える労働者が増えており、企業の生産性の低下が問題になっています。中にはメンタルヘルス不調による過労自殺や過労死もあり、有名企業が労災を請求されるといった事件もありました。

これらの対策として、2015年に厚生労働省は企業向けの「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を改正し、職場でのメンタルヘルス対策を更に推進していくことにしました。

その指針の中には、「セルフケア」、「ラインケア(ラインによるケア)」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」、「事業場外資源によるケア」という4つのメンタルヘルスケアが示されています。

今回の記事では、この中から「ラインケア」について詳しく説明します。ラインによるケアとは、部長や課長などの役職に就く管理監督者(管理職)が行うメンタルヘルスケアのことです。管理監督者(管理職)は普段の業務で部下に指揮命令を行うだけでなく、事業主から部下の健康を守るという義務も課されているのです。

※「セルフケア」については下記のコラムが参考になります。
メンタルヘルスの基本「セルフケア」を学ぶ

メンタルヘルスにおけるラインケアとは

ラインケアとは、企業の職場における上下の組織(ライン)におけるメンタルヘルスケアをさします。組織における上下関係は、おもに下に位置する部下が強くストレスを感じるケースが多くみられます。

上下の組織(ライン)において、上に位置する役割を担う部長や課長、マネージャーなどの管理監督者(管理職)は、部下に対して、「良好なコミュニケーション」「快適な職場環境の提供」などのラインケアを実行しなければなりません。

ラインケアの適切な実行によって、社員のストレスを軽減し、生産性を向上させることにつながります。

ラインケアの重要性

近年グローバル化や高齢化による人手不足、IT化など、日本企業を取り巻く社会環境の変化にともない、企業が市場で継続的に成長することが厳しい状況が続いています。企業経営が厳しくなることによって、企業で働く社員のストレスは強まっています。

ラインケアを実行し、社員と良好なコミュニケーションをとり、社員がストレスなく働ける職場環境をつくりだすことが、社員一人ひとりの生産性を向上させ、その結果企業経営を良好に継続していくことにつながります。

 管理監督者(管理職)が行うべき具体的な取り組み

それでは、管理監督者(管理職)はラインケアとしてどのようなことを行うべきなのでしょうか。ここでは2つの具体的な方法を紹介します。

(1)部下からの相談への対応
まず必要なのが、日頃から部下が相談しやすい環境を心掛けることです。企業で働いていると、困ったことがあっても相談しづらい上司に当たってしまったという経験が一度はあるのではないでしょうか。管理監督者(管理職)は、部下が自発的に相談できるような雰囲気を整えましょう。

また、長時間労働が続いて過労状態にあるメンバーや、強い心理的負荷の伴う経験があったメンバーには、管理監督者(管理職)から声を掛けるように心掛けてください。部下から相談を受けたら、話をじっくりと聞きましょう。

ここで意識して欲しいのは、部下の話を批判せず、相手に話を聞いてもらっていると安心させる「積極的傾聴法」という技法です。

<積極的傾聴法のポイント>
①相手を受け止める
相手に興味を持ち、興味を持っているということを相手が分かるように表情や態度で伝えましょう。

②相手の立場に立つ
話を聞いて、相手の立場だったら相手と同じような言動をするだろうとイメージしましょう。積極的傾聴は部下から相談を受けたとき以外にも普段から行うことで、部下のメンタルヘルス不調の早期発見や、事業場内産業保健スタッフ等や事業場外資源への相談や受診を促すなどの適切な対応につながります。

※若手社員のメンタルヘルスケアについては下記のコラムが参考になります。
若手社員のメンタルヘルスケア~ストレスの傾向と不調を未然に防ぐ方法とは?

(2)職場環境の把握と改善
職場での業務のしづらさは労働者のストレスとなり、メンタルヘルス不調につながる恐れがあります。そこで職場全体で環境の改善を行うことが必要で、そのためには現場の責任者である管理監督者(管理職)の協力が求められているのです。

まず職場環境の把握を行います。日常的な観察などから、職場のストレス要因になっている問題を把握します。ここで活用できるのが「ストレスチェック」です。

厚生労働省がストレスチェックの集団分析に使用することを推奨している「仕事のストレス判定図」には職場のストレスが数値化されているため、職場環境の把握に役立ちます。その上で産業医や人事労務担当者で衛生委員会を組織し、環境改善の計画を立て、実施し、効果を評価していきます。

このように段階を踏んだ対策が推奨されていますが、職場のレイアウト変更、照明や温度などの物理的環境の改善はすぐに実行できる上、職場環境の改善に効果的な場合が多いです。

企業経営として管理監督者(管理職)向けのライン研修を実施する

上下の組織(ライン)において、上に位置する役割を担う部長や課長、マネージャーなどの管理監督者(管理職)が適切なメンタルヘルス ラインケアの取組みを実行できるようにしていくことは企業経営上重要です。人事労務担当者は管理監督者(管理職)向けのライン研修を検討する必要があるでしょう。

※ストレスチェックに関わる研修については下記のコラムが参考になります。
ストレスチェックに関わる研修について、「実施者」「実務担当者」「管理監督者」別にご紹介!【ストレスチェック徹底活用コラム】

ラインケアの重要性まとめ

企業が行うべきメンタルヘルス対策の中の一つである「ラインケア(ラインによるケア)」。部下の健康を守る義務がある管理監督者(管理職)は、部下からの相談への対応や職場環境の把握・改善など、メンタルヘルス対策で大きな役割を担っているといえます。

人事労務担当者の方は、社内の管理監督者(管理職)向けにメンタルヘルス対策の研修や教育、傾聴の研修などを実施し、メンタルヘルス対策の意識を高めるように促してみてはいかがでしょうか。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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